紛争の内容
本件の依頼者は、飲食店経営者であり、トラブルを起こして辞めた元従業員から未払残業代請求をされ、弊所に相談にいらっしゃいました。元従業員は、実態とはかけ離れた内容の労働時間を主張し、高額の未払残業代請求をしてきました。そこで、店舗終業時の締め作業で使用する資料等を用いて計算し、未払残業代はほぼないことを主張しました。すると、両者の主張に隔たりがありすぎるため、訴訟提起されるに至りました。
交渉・調停・訴訟などの経過
訴訟の中では、いかにタイムカードがいい加減に運用されていたのか、業務の実態に合わせた主張をしていきました。もっとも、元従業員も、まったく別の業務実態があったとの主張をしてきました。両者とも、業務実態についての主張が食い違い、それを立証する客観的資料に両者とも欠けていました。
そこで、依頼者にお願いし、店舗営業前の始業開始から、営業終了後店舗を出るまでの間、ノンストップで丸一日定点カメラ等で動画撮影をしていただきました。そして、これを基にして、いかに元従業員の主張している内容が実態とはかけ離れたものであるかを主張していきました。
本事例の結末
裁判所は、タイムカードという、機械的に打刻されて作成される証拠資料の証明力が高く、裁判所はこれに沿った認定をする心証を示しました。もっとも、一日中の業務の再現をする大がかりな主張をすることで、裁判所にもその合理性も一定程度認めてもらうことができ、タイムカードそのままの計算から3割以上減額した金額を支払うことでの和解をすることができました。
本事例に学ぶこと
従業員がいい加減なタイムカード打刻していることをそのままにしておくと、後になって本件のように急に従業員が態度を変えて、実態にそぐわないタイムカードをうまく利用した残業代請求をしてくることがあります。従業員との関係性が良かったとしても、何が起こるかは分からないのですから、使用者に不利な客観的資料を残さないよう、常に気を付けていかなければなりません。
弁護士 平栗丈嗣